雨上がりの空の下 ひとりの女が立ち止まっていた 今日一日にやってくるであろう物事が 一気に押し寄せてきたのだ 息が苦しいのは髪を摑まれて水面に 頭を押さえつけられているからではない 女は寄って立つ場所が無かった 初めから無かったという グニャリとヒザを落とした途端 気がつくと ベッドに蝉のように寝就いて 何をするでもなく ベランダに転がった蝉の死骸を眺めていた やがて女は眠ってしまった もう逃げ隠れは出来ない と思うこと数回 水色の中 電線が揺れた
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