スライド

書きもの、詩 

 

右利きの女

雨上がりの空の下
ひとりの女が立ち止まっていた
今日一日にやってくるであろう物事が
一気に押し寄せてきたのだ
息が苦しいのは髪を摑まれて水面に
頭を押さえつけられているからではない
女は寄って立つ場所が無かった
初めから無かったという
グニャリとヒザを落とした途端
気がつくと
ベッドに蝉のように寝就いて
何をするでもなく
ベランダに転がった蝉の死骸を眺めていた
やがて女は眠ってしまった
もう逃げ隠れは出来ない
と思うこと数回
水色の中
電線が揺れた

date
2018.08.13
write
parco sakamoto
photo
hana