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書きもの、詩 

 
  • 月の言い訳

月の言い訳

雨を心配するように空を見上げた
今は六月たったそれだけ
五月雨が通りすぎて
誰かの匂いが消えて
梅雨の匂いになったそれだけ
思い出せないと知っている匂いを
何度も取り出して
開いて
触って
もやしのヒゲを抜いている
たったそれだけ
しばらくのあいだ手を休め、空を見上げる
月が雨に濡れていた

date
2019.07.17
write
parco sakamoto
photo
rinco