右手で不安の芽を刈り取っていると 左手が不安の種を蒔いてしまい、 途方に暮れている。 雨の日だった。 ビルが光っている。 信号で立ち止まる。 女は雨に 濡れてゆく髪を体を却って楽しみ、交差点で よろけた。 酒気帯び。 すべてはただの風景 流れてゆくだけの風景 夏はピーマンを炒め 冬はニシンを焼く ずぶ濡れた風景はやがて 誰かの道しるべとなった。
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